KPI――点数が実態を表さなくなるとき

社長寄稿 第1回 · 経営の視点

Dao Van Kinh(ダオ・ヴァン・キン)
An Viet Industrial Co., Ltd. 社長・創業者

以下に記すのは経営理論ではありません。裾野産業のものづくりに20年以上携わる中で、私自身が学んだ教訓です。この経験が、経営者、技術者、作業者の皆さんの日々の仕事を少しでも良くする助けになれば、これ以上の喜びはありません。

製造業に20年以上携わる中で、私はある大きな矛盾に気付きました。

多くの部門がKPI目標を達成した月でも、お客様からの苦情はなくならず、納期遅延が続き、同じ不良が再発し、管理者が次々と起こる問題への対応に追われることがありました。

そのとき、KPIダッシュボードの数字が良く見えても、管理システムが有効に機能しているとは限らないと理解しました。

同時に、KPIの一つひとつの数字の背後には、毎日実際に働く人がいることにも気付きました。管理者が点数だけを見て、指導し、話を聞き、社員の障害を取り除くことを忘れれば、KPIは改善を促す道具ではなく、単なる圧力になってしまいます。

以前の私は、十分な目標と整った賞罰制度があれば、すべての活動を管理できると考えていました。しかし経験は、それだけでは足りないことを教えてくれました。KPIは月末の集計のためではなく、社員の日々の仕事を良くするために使われて初めて価値を生みます。

長年の観察と経営を通じて、KPIが意味を失う主な理由は3つあると考えています。

第一に、KPIを月末にしか確認しないことです。 問題が見つかった時点では、すでに損失が発生し、適時に是正する機会を逃しています。これではKPIが早期警報や工程調整の道具ではなく、単なる評価の道具になってしまいます。

第二に、KPIが個人だけを測り、一連の工程全体の成果を十分に反映していないことです。 製造業でお客様が購入するのは、特定の一人の成果ではありません。最終品質、納期、全体の実績を評価します。後工程が遅れ続けたり、不良を出し続けたりしていれば、前工程だけを完全な成功と評価することはできません。

第三に、KPIの点数を裏付ける根拠と改善行動がないことです。 数値は、データ、真因、明確な責任者、是正処置、有効性確認に結び付いて初めて意味を持ちます。これらがなければ、評価は容易に主観的になります。

私は管理チームにいつも次のように伝えています。

KPIは、問題発生後に処罰する人を探すためのものではありません。全員で問題を予防できるよう、リスクを早期に見えるようにするためのものです。

この考えから、An Vietは次の4原則に基づいてKPIシステムを整備しています。

  • すべての指標を日常業務と明確なデータソースに結び付ける。
  • 個人の成果を、チーム、部門、工程全体の成果に結び付ける。
  • すべての不良・異常について真因を解析し、具体的な対策を定め、有効性確認を行って再発を防止する。
  • すべての報告を、過去の記録だけでなく、管理者がより迅速かつ正確に判断するための情報にする。

教訓の中には、時間や費用を要し、ときにはお客様の不満を招いたものもあります。その経験から、会社は処罰を増やすことで強くなるのではなく、自らの失敗からより早く学ぶことで強くなると教えられました。

私にとって、KPIはあくまで道具です。

より重要なのは、一人ひとりが自分の生み出す価値を理解し、仲間との連携方法を知り、最終結果への責任を共有することです。

私はAn Vietの社員によくこう話します。

今日、最も優れた会社になる必要はありません。しかし毎日、昨日より良くならなければなりません。

一人ひとりが少し改善し、各工程が少しずつ磨かれ、すべての不良が教訓になれば、会社は日々強くなります。

私にとって、KPIの点数は目的地ではありません。

目指すのは、一人ひとりが自分の責任を理解し、互いを信頼し、ともに学び成長し、自らつくる製品に誇りを持てる職場です。

それが、An Vietがこれまで歩み、現在も歩み、これからも守り続ける道です。